最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)1270号 判決 1954年3月09日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人三根谷実蔵、同加藤義則、同近藤亮太、同寺尾元実の上告理由(後記)について。
原判決は証拠によつて被上告人の解約申入に正当の事由があることを詳細に説明し、なお上告人の抗弁について判断した上「その他控訴人(上告人)の全立証によるも被控訴人(被上告人)の自ら使用する必要性を妨げるに足る合理的な事情は見当らない」と判示している。してみれば原判決は上告人所論の(一)ないし(四)の主張に対しても判断を与えたのであつて、判断遺脱というは当らず、従つてまた理由不備も認められない。また所論の指摘するように、原判決は被上告人の解約申入の時期より後に被上告人に生じた事由を正当の事由のうちに認定していることは所論のとおりであるが、被上告人が昭和二三年六月以後も引つづいて明渡を請求して来たことは原判決の判示((七)の事実)に明らかであつて、しかも口頭弁論終結当時においては判示諸事実が存在し且つその存在するに至つてからすでに六月を経過していることを記録上うかがい得るから、結局被上告人が解約申入によつて本件家屋の明渡を請求する権利を有するものであることに変りはない。従つて原判決は結論において正当であつて論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)